トランプ政権による研究者や科学機関への圧力が強まっている。前回の本連載(4月13日配信「若手研究者の間で進む“アメリカ離れ”、トランプ政権の愚策がもたらす『産業大国の緩やかな死』」)で述べたように、これまでも大学や連邦政府研究機関への締め付けが行われてきたが、その後、事態は悪化している。

特朗普政府加大了对研究人员和科学机构的压力。此前提到过,特朗普政府已经对大学和联邦政府研究机构进行了限制,但情况进一步恶化。

アメリカ連邦政府は4月14日、ハーバード大学への連邦給付金を大幅に削減した。発端は、トランプ政権がハーバード大学に対して以下のような要求を提示したことだ。
この要求に対して、ハーバード大学のアラン・ガーバー学長は「大学の独立性と憲法上の権利を放棄することはない」として拒否した。その結果、連邦政府は約22億ドルの助成金と6000万ドルの契約を凍結したのだ。

4月14日,美国联邦政府大幅削减了对哈佛大学的联邦拨款。起因是特朗普政府向哈佛大学提出了一些要求,而哈佛大学校长阿兰·加伯表示拒绝,称不会放弃大学的独立性和宪法权利。结果,联邦政府冻结了约22亿美元的助学金和6000万美元的合同。

ハーバード大学は7億5000万ドルの債券を発行して対応したが、公衆衛生など多くの研究プロジェクトが停止の危機に直面。結核やアルツハイマー病、HIVなどの研究が影響を受けている。ハーバード大学は法的措置を検討している。

哈佛大学通过发行7.5亿美元的债券来应对这一情况,但许多研究项目面临停滞风险,包括结核病、阿尔茨海默病和HIV的研究。哈佛大学正在考虑采取法律措施。

バラク・オバマ元大統領をはじめとする多くの学者や政治家がハーバード大学の立場を支持するなど、学問の自由と大学の自治を擁護する声が上がる。ほかの大学も同様の圧力に直面する可能性があることから、アメリカの高等教育全体に影響を及ぼす事態となっている。

包括前总统奥巴马在内的许多学者和政治家支持哈佛大学的立场,捍卫学术自由和大学自治。由于其他大学可能面临类似的压力,这一事件对整个美国高等教育产生了影响。

トランプ政権下での研究者への締め付けの一例として、海洋大気庁(NOAA)の研究者が「能力不足」を理由に解雇された事件がある。この解雇は、政権の大規模な連邦職員削減政策の一環として行われた。
解雇理由として、NOAAは「あなたの能力、知識やスキルは当局の現在のニーズに合致せず、雇用継続には適さないと判断した」と通告した。対象者の中には、ハリケーン予測モデルの専門家であるアンドリュー・ヘイゼルトン博士も含まれている。彼はSNSで「このプロセスは混乱と無意味さに満ちていた」と述べた。
これらの解雇は、NOAAの気候研究や天候予測の能力に深刻な影響を及ぼしており、国際的な災害対応や気候変動の監視にも支障を来している。また、政権は今後さらに1000人以上の職員削減を計画しており、科学界からの懸念が高まっている。
このような一連の動きは「政府効率化省(doge)」による連邦政府の規模縮小政策の一環であり、科学研究や公衆衛生、安全保障などの分野に影響を及ぼしている。航空宇宙局(NASA)や合衆国環境保護庁(EPA)、国立衛生研究所(NIH)などの主要機関でも同様の解雇が進行しており、研究者の間では「科学的亡命」を検討する動きが見られる。

作为特朗普政府对研究人员施压的一个例子,美国国家海洋和大气管理局(NOAA)的研究人员因“能力不足”被解雇。这次解雇是政府大规模削减联邦员工政策的一部分。
NOAA在解雇通知中称,该研究员的能力、知识和技能不符合机构当前需求,不适合继续雇用。在被解雇者中,包括飓风预测模型专家安德鲁·黑泽尔顿博士。他在社交媒体上表示,“这一过程充满混乱和没有意义。”
这些解雇对NOAA的气候研究和天气预测能力造成了严重影响,并对国际灾害应对和气候变化监测构成了障碍。此外,政府计划进一步削减1000多名员工,引发了科学界的广泛担忧。
这一系列行动是由“政府效率化部”(doge)推动的联邦政府缩减政策的一部分,影响到了科学研究、公共健康、安全等领域。类似的解雇也出现在美国国家航空航天局(NASA)、美国环境保护署(EPA)和国立卫生研究院(NIH)等主要机构,研究人员中出现了考虑“科学避难”的动向。

トランプ政権が研究者や研究機関に対する締め付けを強化している理由は、以下のような政治的・思想的背景や利害関係だ。
第1は、科学的見解と政権の政策との対立だ。トランプ政権は、気候変動やワクチン、感染症対策などについて、既存の科学的コンセンサスに懐疑的な立場を取っている。とくに、気候変動を「誇張された脅威」とみなし、再生可能エネルギーへの投資ではなく、石炭・石油などの化石燃料産業を保護する政策を重視している。
また、新型感染症や公衆衛生の専門家による「経済活動の制限要請」なども、政権の経済優先方針と衝突した。
第2に、「ディープ・ステート」(ワシントンの官僚機構)や、大学・研究機関などの知識エリート層への不信がある。そして、科学者や専門家を「既得権益の一部」として敵視する。
政権は、こうした感情を背景に、科学者や専門家を「反トランプ勢力」とみなして、その影響力を排除しようとしているのだ。アメリカは中世の暗黒時代に逆戻りしているとしか思えない。恐ろしいことだ。

特朗普政府加强对研究人员和研究机构的限制,背后有以下政治和意识形态的背景及利益关系。
首先是科学观点与政府政策的对立。特朗普政府对气候变化、疫苗和传染病防控等问题持怀疑态度。特别是,他们认为气候变化是“被夸大的威胁”,更重视保护煤炭、石油等化石燃料产业,而不是投资可再生能源。此外,公共卫生专家提出的“限制经济活动”建议也与政府的经济优先政策相冲突。
其次,政府对“深层政府”(指华盛顿的官僚机构)以及大学和研究机构等知识精英层存在不信任,并将科学家和专家视为“既得利益群体”的一部分而加以敌视。基于这种情感,政府试图将科学家和专家视为“反特朗普势力”,并排除他们的影响力。这种做法让人感觉美国正在倒退回中世纪的黑暗时代,着实令人担忧。

原创翻译:龙腾网 https://www.ltaaa.cn 转载请注明出处


補助金削減がもたらす4つの影響
連邦政府の研究補助金が削減された場合、アメリカの科学研究や技術競争力に、次のような深刻な影響が及ぶと、多くの専門家や機関が警鐘を鳴らしている。
1つ目が、公衆衛生・医療研究の停滞だ。NIHやCDCなどへの補助金削減は、がん、感染症、精神疾患などの研究を直撃する。COVID-19のようなパンデミック対策や、新興感染症への対応力が低下するおそれがある。
2つ目が、論文数や引用数の低下だ。世界の科学論文におけるアメリカのシェアは、すでに中国に肉迫されている。補助金削減のため、質・量ともに研究成果の後退につながる危険がある。
「Nature」や「Science」には、「アメリカの科学の質は、中国の成長により、すでに特定分野で追い抜かれ始めている」との分析が出ている。中国は国家戦略として科学技術投資を拡大しており、AI(人工知能)、量子コンピューター、半導体、宇宙開発などでアメリカに迫っている。AI分野では、すでに中国が論文数や特許出願数でアメリカを上回るとする報告がある。
3つ目が、人材流出と次世代研究者の減少だ。前回も述べたように、大学院生やポストドクター(博士研究員)の多くが、連邦補助金で研究生活を支えている。資金減で研究の継続が困難になり、優秀な人材が民間や海外に流出するリスクが高まる。国際的な頭脳の流入が細ると、アメリカの科学の多様性と質が落ちる可能性がある。
4つ目が、経済成長への悪影響だ。経済学者は、研究開発費は中長期の生産性・成長率に直結すると分析している。
アメリカの経済的繁栄は、第2次世界大戦後の連邦主導の技術投資(インターネット、半導体、AIなど)によるところが大きかった。経済学者のポール・クルーグマンも「科学を軽視する政権は、長期的には国家の競争力をむしばむ」と指摘している。また、「Brookings Institution」「National Academy of Sciences」「Nature」などによるレポートが、このリスクを明確に指摘している。
著者フォローすると、野口 悠紀雄さんの最新記事をメールでお知らせします。

补助金削减带来的四大影响
如果联邦政府削减研究补助金,许多专家和机构警告称,这将对美国的科学研究和技术竞争力产生严重影响。
首先,公共卫生和医疗研究的停滞。对美国国家卫生研究院(NIH)和疾病控制与预防中心(CDC)等机构补助金的削减,将直接影响癌症、传染病和精神疾病等的研究。这可能削弱美国应对新冠等疫情和新兴传染病的能力。
其次,论文数量和引用数量的下降。美国在全球科学论文中的份额已被中国赶超。补助金削减可能导致研究成果在质量和数量上的退步。《自然》和《科学》杂志的分析指出,美国的科学质量在某些领域已被中国超越。中国将科技投资作为国家战略,在人工智能(AI)、量子计算机、半导体和太空开发等领域逼近美国。已有报告显示,在AI领域,中国在论文数量和专利申请数量上已超过美国。
第三,人才流失和下一代研究者减少。许多研究生和博士后研究员依赖联邦补助金来支持研究生活。资金减少将使研究难以为继,增加优秀人才流向民间或海外的风险。国际人才流入减少可能降低美国科学的多样性和质量。
最后,对经济增长的不利影响。经济学家分析指出,研发投资直接关系到中长期的生产力和增长率。美国的经济繁荣在很大程度上依赖于二战后联邦主导的技术投资(如互联网、半导体、AI等)。经济学家保罗·克鲁格曼也指出,忽视科学的政府将长期损害国家竞争力。《布鲁金斯学会》《国家科学院》《自然》等机构的报告明确指出了这一风险。