何のために科学を学ぶのか

为什么要学科学



勝田 忠広(明治大学 法学部 教授)

法学部の学生は科学を学ぶ必要があるのでしょうか。感覚的には、現代社会は広く科学に囲まれており、理系と文系に区別する意味はないように思えます。しかし一方で法学部の学生は専門的に法学を学ぶことが求められ、それに時間をかけないといけないこともまた事実です。
この疑問に答えるため、私が担当している授業「物質と宇宙」「エネルギーと環境」「科学と技術」で扱う科学の3つのテーマ、つまり自然科学、環境問題、科学技術を考えてみます。せっかくですので、科学の授業らしく数式を使って説明しましょう。次の式はアインシュタインの方程式と呼ばれるもので、Eはエネルギー、mは質量、cは光の速さを表します。
E=mc²

胜田忠广(明治大学 法学部 教授)
法学院的学生需要学习科学吗。感觉上,现代社会被广泛的科学包围着,理科和文科没有区别的意义。但是另一方面,法学院的学生被要求专门学习法学,在这方面必须花时间也是事实。
为了回答这个疑问,我会考虑在我所负责的课程《物质与宇宙》、《能源与环境》、《科学与技术》中所涉及的科学的三个主题,即自然科学、环境问题和科技。正好提到了这个,我就借机像上课一样用公式来说明吧,下面的公式被称为爱因斯坦质能方程,E表示能量,m表示质量,c表示光速。

E=mc²
まずは自然科学について考えます。この式を左から右に見ると「エネルギーは物質になる」と解釈できます。宇宙は時間も空間もない状態から急激に膨張してつくられました。エネルギーが素粒子になり原子核が、さらに電子と結びついて原子ができます。そして軽い元素が集まって恒星となり、その恒星はやがて爆発し重元素をばらまき、惑星の材料となります。つまり、地球に住む私たちは、科学的な意味でも星屑からできているのです。法学では人種差別や国際政治などを学びますが、自然科学は、私たちが本来一つであるという大局的な視点とその科学的根拠を与えてくれます。

首先考虑自然科学。从左向右看这个式子可以解释为“能量是物质”。宇宙是从没有时间和空间的状态急剧膨胀而形成的。能量变成基本粒子,原子核再和电子结合形成原子。然后,轻元素聚集在一起成为恒星,恒星不久就会爆炸,散布重元素,成为行星的材料。也就是说,住在地球上的我们,在科学意义上也是由星尘组成的。在法学上学习种族歧视和国际政治等,自然科学给我们提供了“我们原本就是一体的”这种大局观点及其科学依据。

次に環境問題を考えます。今度は式を右から左に見ると「物質はエネルギーになる」と解釈できます。ある条件のもとでは、物質を構成する元素は壊れるときに膨大なエネルギーを放出します。これを利用したものが核爆弾であり原子力発電です。現代社会では、エネルギー問題や気候変動問題についてその枠組みや法的規制の必要性が議論されていますが、環境問題は、私たち人類が目指すべき課題について、その科学的背景や解決策を知る示唆を与えてくれます。

接下来考虑环境问题。这次从右向左看式子可以解释为“物质是能量”。在某些条件下,构成物质的元素在损坏时会释放出巨大的能量。利用这个的原理的是核弹和原子能发电。在现代社会,人们关于能源问题和气候变化问题,讨论了很多框架和法律限制的必要性,环境问题是人类应该面对的问题,这一点是科学给了我们启示,并鞭策我们去解决。

最後の科学技術はどうでしょうか。式を右に左に自由に行き来できるのは、人間の夢と技術のおかげです。宇宙や生命の根源を学ぶのも、エネルギーを制御して社会を変えることも技術が叶えてくれます。しかし、一方で科学技術は「欲望を増幅する装置」とも言えます。いまや科学技術の夢のみを語って許される時代は終わり、科学を扱う人々には説明責任能力や透明性が求められています。これらの課題に第三者的立場から監視を行うためには、法学部で学ぶ論理的思考や法的知識が役立ちます。

那么最后的科技又怎么说呢。我们能够自由地在公式左右(质能)互相转换,多亏了人类的梦想和技术。无论是学习宇宙和生命的根源,还是控制能量改变社会,技术都能实现。但是,另一方面,科学技术也可以说是“放大欲望的装置”。如今,只讨论科学技术的梦想被容许的时代结束了,和科学打交道的人们,被要求要有向大家说明的责任和能力以及研究的透明性。为了从第三方的立场对这些课题进行监视,在法学部学习的逻辑思考和法律知识是有用的。

政府は科学を利用した明るい未来社会を喧伝しますが、過去のさまざまな社会政策の失敗を覆い隠すための口実にみえてしまう時があります。また、残念ながら日本の科学技術力は危機的状況であり、世界的には総合的に理系科目― 科学(Science)、技術(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)―を学ぶSTEM教育が進められているものの、その対応も遅れています。これらを考えると、公務員など公的な就職先を目指す学生も多い法学部にとって、科学を学ぶことに大きな利点があることがわかります。
しかしながら、科学を学ぶことは良いことだけではありません。それは学問としての難しさの話ではなく、真理を知ってしまった上で生じる責任の話です。「文系」であることを口実に、社会的課題から逃げて被害者の立場にとどまることはできなくなります。しかし、それは楽しいだけの「子供のための科学」から卒業して、代わりに学びがいのある「大人のための科学」を知る権利を得たのだとも言えます。

政府利用科学来宣传光明的未来社会,但有时会被认为是掩盖过去各种社会政策失败的借口。另外,遗憾的是,日本的科学技术力量处于危机状态,虽然全世界正在推进综合学习理科科目——科学(Science)、技术(Technology)、工学(Engineering)、数学(Math)——的STEM教育,但日本的紧张很慢。考虑到这些,对于公务员等以公共就业为目标的学生也很多的法学部来说,学习科学有很大的优点。
然而,学习科学不仅仅是一件好事。不是在说作为学科学起来难不难的问题,而是说:在知道了真理之后产生的责任。之后就不能再以“文科”为借口,逃避社会课题。但是,这也另一方面,我们也获得了学习更高级的知识的权利,不再是以前那种快乐的“为了孩子的科学”,取而代之的是值得学习的“为了大人的科学”。

私は現在、POLARIS(市民社会と科学技術政策研究所)を立ち上げ、前記の視点で研究を続けています。若者が科学と社会の中で迷わないために、目印としての北極星(ポラリス)になりたいという意味を込めています。
科学もまた、政治、経済や社会の中に組み込まれています。しかし利害関係のない学生だけが、公平な立場で科学と社会の関係を学ぶことができるとも言えます。ぜひ、これから大学生になる方は、大人になる前にしか学べない、価値ある「若者のための科学」に挑戦してほしいと心から願っています。

我现在成立了POLARIS(市民社会和科学技术政策研究所),会以上述观点继续研究。为了不让年轻人在科学和社会中迷路,这个名字包含了想成为孩子们的北极星(POLARIS)的意思。
科学也被纳入政治、经济和社会之中。但是,对于那些没有利害关系的学生,才能以公平的立场学习科学和社会的关系。希望今后成为大学生的各位,一定要挑战只有在成为大人之前才能学到的,有价值的“为了年轻人的科学”。