永久凍土と気候の長くて深い関係

永久冻土和气候的漫长而深远的关系


●永久凍土はどのように分布しているのか
さて、永久凍土はどんなところにあるでしょう。
そうです、寒いところにあります。寒いところと言えば、緯度の高いところ。ですが、緯度が高ければそこに永久凍土がある、というわけではありません。この連載でも何度か紹介した図「北緯30度以北・北半球の永久凍土帯分布」をあらためて見ていただくと、同じ北極圏南限(北緯66度33分。太い黒線)の付近でも、アラスカやシベリア(地図の5時から8時の方向)には広く永久凍土が分布していますが、北ヨーロッパ(地図の11時の方向)はそうでもありません。
一方で、この地図には緯度が低い(北緯30~40度の間)のに永久凍土が広がっているところ(4時の方向の北アメリカ西部、9時の方向の東アジアや、11時の方向の西ヨーロッパ)があります。そして、グリーンランド(1時半の方向)や南極大陸(図「南緯60度以南・南極大陸の永久凍土分布」参照)では永久凍土は陸地の縁にちょっと見えているだけです。さて、なぜでしょう。
永久凍土とは、寒くて地面の下が2年間以上凍ったまま(より正確には、0℃以下が2年以上継続する地盤)のところでしたね(関連記事「地球温暖化で融けている? 『永久凍土』に関する誤解を解く」参照)。ここで先の問題の答えを言うと、①永久凍土は寒いところにあるけれど、寒い場所すべてにあるわけでもない。また、②緯度が高くなくても標高が高いために寒くなる場所がある、そして、③まだ調べられていなくてよく分からない、の組み合わせになります。そのあたりの事情をこれから説明していきましょう。

●永久冻土是如何分布的
那么,永久冻土在哪里呢。
是的,在寒冷的地方。说到寒冷的地方,就是纬度高的地方。但是,纬度高并不等于就有永久冻土。本连载中也多次介绍过的图“北纬30度以北、北半球的永久冻土带分布”,同样在北极圈南限(北纬66度33分)附近,阿拉斯加和西伯利亚也分布着永久冻土。
另一方面,在纬度低(北纬30~40度之间)的地方永久冻土蔓也延开来(北美西部,东亚西北部,西欧北部)。并且,在格陵兰(1点半的方向)和南极洲中永久冻土只能在陆地的边缘稍微能看见。那么,这是为什么呢。
所谓永久冻土,是指寒冷的地面下冻冰2年以上(更确切地说,0℃以下持续2年以上的地基)的地方。在这里回答刚才的问题的答案的话,那么就是①永久冻土虽然在寒冷的地方,但是并不是所有寒冷的地方都有。另外,②即使纬度不高,因为海拔高而有变冷的地方也会有,③还有一些没有被调查清楚的组合。现在开始说明一下这方面的情况吧。

●永久凍土の分布を決める様々な要素
気候とは、狭い意味では温度と雨(湿潤・乾燥)の状況を指して使いますが、季節変化、雪や氷の状況、地形、植生なども含めて気候(あるいは気候システム)ということがあります。この稿では気候をこの意味で使います。
地球上で寒いところには、大ざっぱに言って2種類あります。1つは緯度の高いところ(南極、北極など、極に近いところ)で、もう1つは標高の高いところです。アラスカやシベリアは緯度の高いところに属します。
一方、図の9時方向、日本列島と似た緯度にある永久凍土の広がりは、チベット高原(ここを南極・北極に次ぐ第3の極という言い方もあります)で、これは標高が高いところに属します。高山の上の永久凍土(山岳永久凍土と言います)はヨーロッパのアルプスや北米大陸のロッキー山脈にもあります。そして、それは思ったよりももっといろいろなところに分布しています。アフリカのキリマンジャロやハワイ、南米のアンデス山脈といった熱帯(南北の回帰線以内)の高山で、また日本でも富士山や大雪山、また北アルプスの立山などの山頂付近で見つかっています。

●决定永久冻土分布的各种要素
气候在狭义上是指温度和雨(湿润、干燥)的状况,但也有季节变化、雪和冰的状况、地形、植被等气候(或者气候系统)。在这篇文章中,气候指的是后者的意思。
地球上寒冷的地方,大致来说有两种。一个是纬度高的地方(南极、北极等极近的地方),另一个是海拔高的地方。阿拉斯加和西伯利亚属于纬度高的地方。
另一方面,与日本列岛相似的纬度上永久冻土的蔓延,是西藏高原(也有将这里称为仅次于南极、北极的第三极),这属于海拔较高的地方。高山上的永久冻土(被称为山岳永久冻土)在欧洲的阿尔卑斯山和北美大陆的洛基山脉也有。而且,这比想象的要分布在更多的地方。在非洲的乞力马扎罗、夏威夷、南美的安第斯山脉等热带(南北回归线以内)的高山上,在日本也在富士山、大雪山、以及北阿尔卑斯等山顶附近发现。
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冬に十分に気温が下がる地域でも、雪や氷が上を厚く覆っていると地面はよく冷えません。これはお布団をかぶったような状態なので、上の空気がうんと冷えてもなかなか地面にそれが伝わらないのです。
逆に日が差さない向きの斜面(北半球では北向き斜面、南半球では南向き斜面)や、樹木やコケなどが地表面の上を覆っているところであれば地面が暖まりにくいので、そういうところでは凍土が維持されやすくなります。十分に寒くないと地面の下が凍らないので永久凍土はできないけれど、凍結した地面を維持するにはそれなりの条件が必要だということです。このようにいろいろな要素がせめぎ合って永久凍土の分布を決めています。なお、熱帯の場合は、夏冬の季節変化よりも昼夜の寒暖差が顕著で、永久凍土が見つかるとしたら、火口のくぼみや氷河の脇など、夜に冷えて昼に融けないところになります。

即使是冬天气温十分下降的地区,如果雪和冰覆盖在上面的话,地面也不会很冷。这是像盖被子一样的状态,上面的空气即使很冷也很难把它传递到地面上。
相反,如果是向阳的斜面(北半球是朝北的斜面,南半球是朝南的斜面)、树木和苔藓等覆盖在地表上的地方,地面就不容易暖和,这样的地方就容易维持冻土。如果没有十分冷的话,地面下就不会结冰,所以不能永久冻土,但是要维持冻结的地面,需要对应的条件。这样各种各样的要素互相影响决定着永久冻土的分布。另外,在热带的情况下,比起冬夏的季节变化,昼夜的寒暖差更显著,如果发现永久冻土的话,大部分是在火山口的凹陷和冰河的侧面等,晚上变冷后白天无法融化的地方。

気候と永久凍土の話をもう少し続けましょう。地球の気候を決める一番の要素は太陽からの放射(太陽の放射エネルギーの変化と、太陽と地球との幾何学的な位置関係)です。それに海と陸の分布や海からの距離が加わります。
地球全体の平均気温の大まかな変動は、5億年ほど昔から現在までの推移が推定されていますが、その間には現在よりももっと暖かい時期(例えば恐竜が跋扈していた頃)や寒い時期(人類がマンモスを狩っていた頃)があったことはご存じでしょう。このように気候はずっと変化しています。現在からさかのぼって最も近い氷期(最終氷期)は約7万年前から約1万年前まで続きましたが、2万年くらい前が一番寒い頃でした。最終氷期最盛期という言い方をされたりしますが、その頃には北米大陸やスカンジナビア半島のあたりに大きな氷床ができていました。
ところが、シベリアから北東アジアにかけての広い地域や、北米大陸の北西部(アラスカからカナダの一部)は氷床に覆われませんでした。その理由はここでは触れませんが、氷床に覆われていない剥き出しの大地は、当時の冷たい気温(現在よりも冬は12℃、年平均で10℃くらい低かったと推定されています)で冷やされ続けて、地面の深いところまで凍結しました。現在でもこの地域の北極海沿岸では、厚さが500mを超える永久凍土があります。またそのさらに北側の海底では、氷期に形成された永久凍土が水没して、海底永久凍土として存在しています。一方、氷床に覆われていた北米の大部分(主にカナダ)の永久凍土は、氷床がなくなった後に形成されたので厚さはシベリアよりもずっと薄くて100m以下、北方林が広がる不連続的永久凍土帯では25~30mほどが典型的な値です。

决定地球气候的第一要素是太阳的辐射(太阳的辐射能量的变化和太阳和地球的几何位置关系)。而且还有海陆的分布和海的距离。
地球的平均气温出现大变化的,大概是从5亿年前到现在,不过,在这期间有比现在更暖和的时期(例如恐龙横行的时候)和寒冷的时期(人类狩猎猛犸象的时候)。这样的气候一直在变化。从现在开始追溯到最近的冰期(最终冰期)大约是从7万年前开始持续到1万年前,大约2万年前是最冷的时候。也有说是最终冰期最盛时期,那时在北美大陆和斯堪的纳维亚半岛附近形成了很大的冰床。
但是,西伯利亚到东北亚的广大地区和北美大陆的西北部(阿拉斯加到加拿大的一部分)没有被冰床覆盖。没有被冰床覆盖的裸露的大地,在当时的寒冷气温(估计比现在冬天低12℃,年平均低10℃左右)下持续冷却,冻结到了地面的深处。现在这个地区的北冰洋沿岸也有厚度超过500米的永久冻土。另外,在北侧的海底,冰期形成的永久冻土被水淹没,作为海底永久冻土而存在。另一方面,被冰床覆盖的北美大部分(主要是加拿大)永久冻土是在冰床消失后形成的,所以厚度比西伯利亚要薄得多,在北方蔓延的不连续的永久冻土地带,25~30米厚度是典型的值。
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地面の下の変化、特に温度の変化は大気や地表面に比べると非常に緩やかなので、過去の気候の情報を蓄えた記憶装置だとも言えます。過去の気候(温度や湿潤度)を推定するための道具立てにはいろいろなものがあります。寒い気候でないとできない地形や生えない植物(の花粉)、あるいは逆に暖かくないと成長しない鍾乳石(石筍=せきじゅん)などがその例で、凍土現象も過去の気候を復元したり推定したりすることに一役買っています。他にも、泥炭(独特なスモーキーな香りを持つウイスキーを作るのにも使われますね)がいつごろ堆積したか、どんな植物がその中に含まれているかということも、昔の凍土の状況に関する情報を伝えてくれるのです。
それらによれば、1万年ほど前までには氷床はほぼグリーンランドを残して消えてしまって地面が直接大気と触れることになり、広い地域に新しく永久凍土が形成されてきました。紀元前1000年ごろの寒冷な時代や17~19世紀の小氷期の間に永久凍土は拡大しましたが、その後は縮小傾向が続いています。生態系や人間活動に密接に関係する地面近くの永久凍土層(表層3~4m)は、全球平均気温が1℃上昇するごとに300~400km2分が減っていくと推定されています。現在の温暖化がこのまま進めば、融解や縮小傾向は今後も続き、このシリーズでお伝えしてきたような変化や影響が続くでしょう。

地面下的变化,特别是温度的变化与大气和地表相比非常缓慢,可以说是储存了过去气候信息的存储装置。为了推测过去的气候(温度和湿润度),有各种各样的方式。只有在寒冷的气候下才能形成的地形、无法生长的植物(花粉),或者相反如果不温暖就无法生长的钟乳石等就是例子,冻土现象也有助于恢复和估计过去的气候。除此之外,泥炭(也可用于制作具有独特烟熏香味的威士忌)是什么时候堆积起来的,什么植物包含在其中,也能传达有关以前冻土状况的信息。
根据这些数据,大约在1万年前,冰床基本上就离开了格陵兰岛,地面直接与大气接触,在广阔的地区形成了新的永久冻土。在公元前1000年左右的寒冷时代和17~19世纪的小冰期之间永久冻土扩大了,但是之后偶持续缩小的倾向。与生态系统和人类活动密切相关的地面附近的永久冻土层(表层3~4m),推测全球平均气温每上升1℃就会减少300~400平方千米。如果现在的温暖化继续发展的话,融化和缩小的倾向今后也会继续,这一系列所传达的变化和影响会持续下去。
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●永久凍土の有無をどのように調べるのか?
ところで、永久凍土があるか、もしくはないかはどうやって調べるのでしょう。これには、確実だけれど手間がかかるし調べられる範囲も限られるものから、不確実さは伴うけれども比較的容易に広い範囲にわたって調べられるものまでいろいろな方法があります。
確定的に永久凍土の存在を確認するためには、地面を掘って、温度計を入れて、2年以上継続して0℃以下であるかどうかを直接調べないとなりません。それよりは広い範囲を調べる方法として、地盤の震動の伝わり方を調べる地震探査や、電磁波もしくは電流を流して地下構造を探る地中レーダー探査あるいは電気探査など(総称して物理探査と言います)を使うこともあります。さらにもっと高いところから人工衛星を使って広い範囲の永久凍土の存在や変化を推定する方法の一部はすでにご紹介しましたね

●如何调查有无永久冻土?
但是,如何调查有没有永久冻土呢。这是很费时间的,调查的范围也有限,伴随着不确定,但是有各种各样的方法可以在比较宽的范围内进行调查。
为了确认永久冻土的存在,必须挖掘地面,放入温度计,连续2年以上,直接调查是否在0℃以下。作为调查更大范围的方法,有时也会使用地震探测、电磁波或电流流动来探索地下构造的地下雷达探测或电气探测等(统称为物理勘探)。

これとは少し異なる方法に、地面が凍ったり融けたりしないと形成されない地形や地層をもとに推定するという方法もあります。この方法からは現在の永久凍土の有無だけでなく、過去にできた永久凍土についての情報を調べることができます。地面の下が凍結・融解するときに、地質や温度、水の条件によって地面の下に特徴的な構造ができる場合があり、たまたま崖崩れなどで地層の断面が見えている場所(露頭)や、あるいはそのためにあらためて地面の下を掘って、永久凍土の成り立ちや終焉(しゅうえん)を調べることも行います。
さて、ここまで読んで、なぜグリーンランドや南極に永久凍土が「少ない」のか分かりましたでしょうか。

与此稍有不同的方法是,根据地面时而冰冻时而融化的特性来推测。从这个方法不仅可以调查有没有现在的永久冻土,还可以调查过去的永久冻土的信息。地面下结冰、融化时,根据地质、温度、水的条件,地面下可能会形成特征性的构造,偶尔在悬崖坍塌等能看到地层断面的地方,或者为此重新在地面下挖掘也能调查永久冻土的形成和消亡。
那么,读到这里,你知道为什么格陵兰岛和南极的永久冻土“很少”吗。

答えは大部分の場所が厚い氷(氷床)に覆われていて、その下がどうなっているのかまだはっきりと分からないからです。これらの地域で永久凍土の存在がはっきりしているのは、氷床から外れた沿岸地域や、湿度が低すぎて氷河・氷床が発達しない場所(例えば、南極のドライバレー)など剥き出しになっている場所がほとんどです。
ちなみに、ドライバレーのような極地砂漠は、地球上で最も火星に似ているところといわれますが、火星探査機から送られてくる地表の情報から判断して、火星にも(上記の地球上での定義に従った)永久凍土はあるようです。火星よりも太陽から離れた地球型惑星や衛星にもきっとあることでしょう。

因为大部分的地方都被厚厚的冰(冰床)覆盖着,还不清楚那下面是什么样子。这些地区永久冻土的存在是很明显的,除去了冰床的沿岸地区,湿度太低、冰河·冰床不发达的地方。
顺便说一下,像南极那样的极地沙漠,据说是地球上最像火星的地方,从火星探测器送来的地表信息判断,火星上也有永久冻土(按照上述地球上的定义)。比起火星,远离太阳的地球型行星和卫星也一定存在吧。

●世界と日本の永久凍土の研究組織
最後に、このシリーズでご紹介したような永久凍土を研究している研究者や技術者の組織・団体について、宣伝を兼ねてご紹介したいと思います。まずは国際組織ですが、国際永久凍土学会(International Permafrost Association=IPA)が中心になっています。このIPAは1983年にソ連(当時)、米国、カナダ、中国などが中心となり、「永久凍土」に関する知識の普及と、科学的研究や工学的利用に従事する人、国内・国際機関間の協力を促進することを目的に結成されました。なお、「永久凍土」と冠してはいますが、冬には凍るけれども夏は融けてしまう季節凍土(ご存じの方もおられるでしょうが、「霜柱」も季節凍土の現象です。日本の多くは季節凍土帯に属します)や、地盤を凍らせてトンネルなどの掘削を行う地盤凍結工法なども対象に含まれます。
これまでは自然地理学的・工学的な分野の研究が多かったのですが、近年は生態学、生物学、人文科学、社会学、法学、生活・文化など幅広い観点から「永久凍土」に関わる研究やその広報・アウトリーチが行われています。研究発表や相互交流、地域巡検などを目的に行われる国際的な学術大会
また、国内でも「永久凍土」に関連した研究者・技術者が情報交換や交流を行う日本永久凍土研究会(Japan Permafrost Association)や、知見や情報を交換する「いそっぷ」と呼ばれる不定期セミナーがあります。

●世界和日本的永久冻土研究组织
最后,我想介绍一下本系列介绍的研究永久冻土的研究人员和技术人员的组织和团体,同时进行宣传。首先是国际组织,以国际永久冻土学会(IPA)为中心。该IPA于1983年以苏联(当时)、美国、加拿大、中国等国家为中心,以普及“永久冻土”相关知识、促进从事科学研究和工学利用、国内和国际机构之间的合作为目的而结成。另外,虽然被冠以“永久冻土”,但是也包含冬天结冰,夏天却融化的季节冻土(大家都知道吧,“霜柱”也是季节冻土的现象。日本大部分属于季节冻土带)、也包括冻结地基进行隧道等挖掘的地基冻结等。
迄今为止,自然地理学、工学方面的研究很多,近年来从生态学、生物学、人文科学、社会学、法学、生活、文化等广泛的观点出发,进行了关于“永久冻土”的研究和宣传。以发表研究、相互交流、区域巡检等为目的的国际学术大会也是每4年举办一次的国际大会。
另外,在日本国内也有与“永久冻土”相关的研究人员、技术人员进行信息交换和交流的日本永久冻土研究会(Japan Permafrost Assiociation),以及被称为“交换知识和信息”的不定期研讨会。