1年延期して開催された4年に一度のスポーツの祭典が、無観客のまま静かに幕を下ろした。
北京に住む私も、連日テレビの前にくぎ付けとなり、日の丸を背負って世界の強豪と必死に戦うアスリートの姿を見て強い勇気をもらった。海外での生活が長いと祖国を思う気持ちは強くなる。表彰式で「君が代」を聞く度に胸が熱くなった。
たくさんの感動を与えてくれた日本代表選手、そして何より、緊急事態宣言が続く中でも無事に開催してくれた、運営スタッフ、ボランティアのみなさんに心より感謝したい。
残念だったのは無観客となってしまったことだ。何とか中止は免れたものの、結果として最悪な状況下での開催だった。日本のコロナ対策はいったい何が問題だったのだろうか。
まずは、最新の中国式コロナ対策を見てみよう。

延期一年举办的四年一度的体育盛会终于在无观众到场的情况下落下了帷幕。
就连呆在北京的我也是每天盯着电视机,看着背负日本国旗和世界豪强拼命战斗的运动员的身姿,从获得勇气。在海外呆的时间越长,就越是思念祖国。领奖仪式上每次听到国歌胸口都会热腾起来。
日本国家队的选手给予我非常多的感动。而且,还特别想从心底感谢在紧急事态宣言中让奥运成功举办的运营方和志愿者。
遗憾的是,比赛没有观众。总算是避免了中止,但结果还是在最糟糕的情况下召开。那么日本新冠对策到底有什么问题啊。总之,还是先看下中国的新冠对策吧。

「ゼロコロナ」を目指す中国式対策
新型コロナウイルスの市中感染が数カ月間ゼロに抑えられるなど、これまで抑え込みに成功していた中国だが、インド型(デルタ型)が流入したことで、7月末以降各地で多くの新規感染者が発生した。
7月20日、中国・江蘇省にある南京禄口国際空港のPCR検査で、空港職員の新型コロナウイルスの新規感染が確認された。南京市の発表によると、感染したのは清掃員。約10日間にわたり機内清掃などの業務をしていたが、空港における防疫措置が徹底されておらず、全国各地に拡散してしまった。

以“零新冠”为目标的中国式对策
中国虽然在长达几个月中都成功控制新冠,让市内感染保持为零,但是随着德尔塔毒株的流入,7月末各地也开始出现了很多新感染者。
7月20日,中国江苏省南京禄口国际机场的PCR检查中发现机场人员有人感染新冠病毒。根据南京市发布的信息,感染的是清洁工。虽然进行了10天机内的清扫工作,但是因为机场防疫措施不够彻底,还是扩散到了全国各地。

これに対し中国政府は、徹底的な隔離と大規模な検査を組み合わせた強力な「コロナ撲滅作戦」を素早く展開した。
私が住む北京市でも約半年ぶりに市中感染が確認された。その一つが、北京市の北東部に位置する朝陽区望京の国風上観小区(団地)。私の友人が住む場所だ。8月4日の早朝に感染が確認され、その日中に小区全体が封鎖された。同エリアの中でも屈指の敷地面積を誇る高級マンションで、大きめの部屋が多く、約2500世帯1万人が住んでいるという。感染者の住む棟の住人は部屋から一歩も外に出ることを禁じられ、その他の棟の住人は小区から出ることを禁じられた。住民全員を対象に、3週間の封鎖期間中に6度のPCR検査も実施された。

对此,中国政府进行了彻底的隔离和大规模检查的合击,迅速展开了“新冠扑灭作战”。
我居住的北京市是过了半年有一次发现了市内感染。其中之一在北京市东北部的朝阳区望京国风上观小区。这是我朋友居住的地方。8月4日早上发现有人感染,当天小区全体就被封锁。该区域是有着可数居住面积的高级公寓,有很多大房子,有大约2500户1万人居住在这里。感染者居住的那栋楼里的人不能跨出来一步,其它楼房里的人也不能出小区。全员在3周的封锁期间内进行了6次PCR检查。

このような厳しい措置にも文句を言う住民は全くいなかったそうだ。ゲートに山積みになった宅配物の配送など、多くの住民がボランティア活動に参加し、互いに助け合ったという。封鎖が解除された8月24日の夜にお祝いを兼ねて友人と食事を共にしたが、「逆に住民の団結力が高まった」と笑顔で語っていたのが印象深い。
中国では、感染者が発生した場所などを中・高リスク地区に指定し重点管理を行う。北京市政府は、市民に対し不必要に北京から離れないよう呼びかけており、14日以内に中・高リスク地区が存在する都市に滞在した人を対象に、北京行きチケットの購入制限を実施した。たとえ旅先が出発前にはリスク地区でなくても、旅行中に指定される可能性も否定できない。8月初旬に旅行を計画していたが、やむを得ず中止を決断した。とても残念だったが、政府の呼びかけにより、事前に購入していたチケットが無料でキャンセルできたのは助かった。

对于这样严格的措施,没有一个居民有任何怨言。大门外快递堆积如山,很多居民都是自发参加活动,互相帮助。封锁结束后8月24日的晚上,包含庆祝的意义和朋友一起就餐,他笑着说这反倒让居民更加团结了。这点让我印象颇深。
中国对于发生感染的地区进行中·高风险区域的划分,然后进行重点管理。北京政府呼吁市民不要轻易离开北京。14日内去国中·高风险区域城市的人则限制购买到北京的车票。就算出发前不是风险区域,只要旅行中被指定,那也要一视同仁。8月初我虽然考虑过旅行,但果然还是不得不中止了。虽然很遗憾,但是因为有政府的呼吁,所以事先购买的车票可以全额退款。这还是不错的。

今回の感染拡大は感染力の強いデルタ型によるものだったが、強力な抑制策により急速に収束へと向かっている。空港で最初の感染者が見つかってから約1か月後の8月19日には、南京市の全てのエリアが低リスク地区へと引き下げられた。全国でも、ピーク時には220を超えていたリスク地区は、8月31日現在で11まで減った。最近は新規感染者数がゼロの日も少なくない。

这次的感染扩大是感染力很强的德尔塔毒株来带来的,不过通过强力的抑制政策,很快就得到了控制。从机场最初发现感染者,大约一个月后8月19日南京市全体都降为了低风险地区。全国在高潮有220多个风险区域,但是8月31日现在已经减少到了11个。最近新感染者为零的日子也不少。

日本の水際対策のリアル
日本でここまでの対策ができるのだろうか。
個人的には、強い私権制限を行い「ゼロコロナ」を目指す中国式コロナ対策よりも、個々人の自制心に任せる日本式対策の方が好ましいと思っている。2020年4月の感染第1波の時は、ロックダウンのような強権的な手段をとらずとも、比較的緩い「緊急事態宣言」の下で、多くの国民がとても我慢強く感染拡大の抑制に努めた。

日本边境对策的现实
日本能否执行这种程度的政策呢。
我个人来说,比起限制个人权利以“零新冠”为目标的中国式新冠对策,更加喜欢依靠个人自制心的日本式对策。2020年4月第一波感染的时候,就算不采取封城这样强制的手段,通过比较缓和的“紧急事态宣言”很多国民都非常有忍耐力努力控制感染扩大。

悔やまれるのは、この国内感染が収束へ向かおうとした時期に徹底した水際対策を行わなかったことだ。外からの侵入を厳しく防ぐだけでも、日本国内における爆発的感染を回避できた可能性はある。
2021年4月に米国から一時帰国した友人に日本の空港での水際対策の状況を聞いて、あまりの緩さにがくぜんとした。

遗憾的是,国内疫情开始收束时,并没有实施彻底的边境防疫政策。如果能够严格阻止外部的入侵,那么日本国内感染的爆发就有可能回避了。
2021年4月我从美国回国的朋友那里打听过日本机场的边境防疫对策。因为过于松懈,非常让我吃惊。

羽田空港到着後は、通常の入国手続きに加え、健康チェックやPCR検査など、新型コロナ専用の作業が待っている。その一つに、14日間の健康観察のためのアプリの入手や設定がある。具体的には、①位置情報を確認するためのアプリ「OEL(Overseas Entrants Locator)」、②健康状態をビデオ通話で確認するために使用する「Skype(スカイプ)」もしくは「WhatsApp(ワッツアップ)」、③新型コロナウイルス接触確認アプリ「COCOA(ココア)」の3つのアプリを自分のスマホにダウンロード、設定しなければならない。

到达羽田机场后,除了通常的入境手续,还有检查健康和PCR检查等新冠专用的作业。其中之一就是,为了进行14天的健康观察下载使用专用的APP。具体有确认位置情报的APP“OEL”,通过视频店话确认健康状态的“Skype”或是“WhatsApp”,还有就是进行新冠接触确认的APP“COCOA”。必须要下载这三个APP,然后进行设定。

普段使い慣れていないアプリであるため、多くのスタッフが配置され、手取り足取り作業をサポートしてくれる。しかし驚くべきはスタッフとのソーシャルディスタンスが全くとれていないことだ。「この1年間、アメリカではソーシャルディスタンスを気にしてばかりだった。見送ってくれた娘ともエアハグ。見ず知らずの他人が数十センチの距離に来るなんてあり得ない」と憤る。

因为是平时不太用的APP,所以配备了很多工作人员,手把手教使用方法。让人吃惊的是,这些工作人员完全没有遵守社交距离。朋友很生气地说,这一年内美国都非常重视社交距离。送女儿的时候都是空气拥抱。和不认识的人保持几十厘米的距离,简直不敢想象。

スタッフはマスクのみで防護服も着ていない。毎日のように至近距離で帰国者の対応をしていたら自らが感染し、ウイルスを拡散させてしまうリスクはあり得る。逆に、海外からの入国者で、ここでスタッフを介して感染してしまう可能性も考えられよう。
全ての作業を終え、PCR検査の陰性結果を待って解放された後、外で見た光景はさらに衝撃的だったそうだ。空港から自宅やホテルなど待機場所までの交通手段として、電車やモノレール、バス、タクシーといった公共交通機関は使用してはいけないはずなのに、多くの入国者が「モノレールの方向に吸い込まれていった」という。別の知人から聞いた話では、空港からそのまま国内線で別の都市に移動した人もいるそうだ。我が国のコロナ対策は、あくまで「要請」であり、そこに強制力はない。

工作人员只有口罩,没有穿防护服。每天都要超近距离和回国者交流。自己感染病毒,扩散的而风险也是有的。反过来,从海外入境的人通过这里的工作人员感染的风险也是存在的。
等到工作全部结束,PCR检测也是阴性被解放后,外面看到的光景更加有冲击力。从机场回家或者去酒店这样的地方必须要使用电车、轻轨、公交、出租车这样的公共交通。不过大多数入境者都去往了轻轨的方向。从别的朋友那里听说,有人从机场出来就直接通过国内线去到别的城市。我国的新冠对策只是“请求”,并没有强制力。

友人は帰国者専用の無料シャトルバスで空港近くのホテルに移動し、自主隔離生活を開始。わざわざダウンロードしたビデオ通話アプリや電話によるリアルタイムの確認は一度もなく、結局、メールによる確認しか来なかったという。
最近ではこれよりも厳しくなっていると聞くが、新型コロナの世界的大流行(パンデミック)から1年以上経過した時点においても、ここで紹介した穴だらけの水際対策が実施されていたのは紛れもない事実である。

朋友通过归国者专用的免费班车到了机场附近的酒店,开始了自主隔离生活。专门下载下来的视频通话APP和电话即时的确认一次都没有,结果只有邮件的确认罢了。
最近听说比这个已经更严格了,但是在新冠病毒已经在世界大流行过了一年以上,还实施上面介绍的那种充满漏洞的边境对策也是不争的事实。

国内ロックダウンの前に強力な水際対策の実施を
2021年に入り、緊急事態宣言が乱発された結果、日本国民の「コロナ疲れ」を指摘する声が聞かれるようになった。例えば東京都では、今年1~8月の243日のうち、3度の緊急事態宣言の発令期間は計181日間に及ぶ。2度のまん延防止等重点措置の適用期間34日間を含めると、今年の89%の期間が何らかの制限を受けていることになる。しかも収束のめどは全く立っていない。ゴールの見えないマラソンを走らされているような状態で、「疲れるな」という方に無理がある。

在国内进行封城前采取强力的边境对策
进入2021年,随便发布紧急事态宣言的结果,有人指出日本国民已经因此而“疲于新冠”。比如东京,今天1~8月243天中,发布了3次紧急事态宣言,达到了181天。加上为了防止二次蔓延采取重点措施的适用期间的34天,今年89%的时间都处于某种限制之中。而且,完全看不到结束的兆头。处于这种看不见终点的马拉松的话,不感觉疲惫才是不可能的。

このような中、8月20日の会合で全国知事会がまとめた政府への緊急提言では、ロックダウン並みのさらに強い規制を可能とする法整備などを求めた。
しかし、ロックダウンの前にまずやるべきことは水際対策の強化ではないか。バケツの中の水を必死でろ過してきれいにしても、汚水を外から垂れされ続けていては、いつまでたっても汚れたままだ。

这种情况下,8月20日的会议上,全国知事会总结的对政府的紧急提案中,有能够实施和封城相当的限制措施的内容。
不过比封城更先要做的是边境对策的强化吧。再怎么把水桶里的水进行过滤,只要外界的污水不断流进来,那么永远都不会清洁。

私権の制限を伴うロックダウンが可能なのであれば、水際対策に関しては、中国並みのレベルに引き上げることを検討してもいいだろう。中国では国内で確認された新規感染者数について、市中感染ケース以外に、「境外輸入」ケースも公表している。水際で感染が確認された患者の数だ。中国国家衛生健康委員会によると、2021年8月末までに確認された「境外輸入」ケースは8340人に達した。つまり、これだけの数の感染者が国内に入ってウイルスを拡散させるのを、水際で未然に防いでいるということだ。中国式水際対策の効果は高い。

既然要限制个人权利让封城也能实现,那么在边境对策上,也应该考虑下提高到中国同等的水平吧。中国国内确认的新感染者数量,除了市内感染以外,也公布了境外输入的数据。这是在边境确认的感染者数。根据中国国家卫生健康委员会的数据,2021年8月末确认的境外输入病例有8340人。也就是说,从边境就防止了这么多人进入国内扩散病毒。中国式的边境对策效果显著。

正直言うと、空港からの移動で公共交通機関を使わないことや14日間の自宅待機を「お願い」する、強制力を伴わない比較的緩い対策のほうが、海外に住む我々が帰国する際には楽だ。しかし、国益を最優先に考えるのであれば、「性善説」に基づく水際対策は、早急に見直すべき時期にきている。

说实话,从机场回去不用公共交通和14天居家隔离停留在“请求”上,这种没有强制力缓和的对策对于居住在海外的我们回国来说更加轻松。不过最优先考虑到国家利益,基于行善说的边境对策还是应该早点重新制定。

国の権限強化や私権制限に対する反対意見は根強く存在する。恣意的な運用を防ぐ対策は必要だ。例えば、「WHOのパンデミック宣言期間中」のように、外部環境に応じて適用期間を限定するのも一つの手だろう。
歴史は必ず繰り返す。次のパンデミックに備える意味においても、強力な水際対策の導入を検討すべきだ。

对强化国家权限和限制个人权利的反对意见有很深的基础。防止肆意滥用的对策也是需要的。比如,像是WHO的世界大流行宣言期间这样,从限定适合外部环境的适用期间也是一个手段。
历史一定会重复。站在准备下一次世界大流行的视点上,也应该考导入强有力的边境对策。